〒188-0011 東京都西東京市田無町3-1-13 ラ・ベルドゥーレタナシ102
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日帰り白内障手術のガイドライン

はじめに

当院は「より安全で、より患者さんに負担をかけない白内障手術」を提供できるよう、お一人お一人に十分時間をとって診療にあたって参ります。特に、ここ西東京市では白内障手術を日帰りで行える眼科施設は少なく、数ヶ月も入院手術の順番を待っているという話も聞きます。当眼科は、西東京市の皆様に、日帰りで白内障手術を受けるという選択肢を提供させて頂きたいと思い、院内に最先端の手術設備を完備し、平成13年の開業当初から白内障手術を行っています。

1. 目のしくみ

人間の情報の8割は視覚、つまり目から入ってきます。光は透明な角膜、水晶体、硝子体を経て、網膜の黄斑部に到達します。カメラでいうレンズの部分が「水晶体」にあたり、ここが濁る病気が白内障です。

2. 白内障の原因

白内障の原因にはいくつかありますが、多くの方は老人性です。つまり白髪や顔のしわと同じく年齢の変化に伴うものです。そのため、60歳を過ぎるころにはほとんどの人が、80歳以上の人はほぼ100%白内障だといえます。悪い病気ではありません。しかし放っておくと、いろいろな合併症を引き起こします。その他目の病気(ぶどう膜炎や緑内障など)、身体の病気(糖尿病やアトピー性皮膚炎など)、外傷・紫外線などでも白内障になることがあります。

3. 白内障になると

白内障になると、カメラのレンズが濁るので、写る像がぼやけます。実際には、「霧がかかって見える」「視力が落ちた」という症状が出てきます。濁る部位によっては光が乱反射して「太陽を見るとまぶしい」という方もいます。眼鏡やコンタクトを付けても、遠くの人の顔が識別できなかったり、新聞などの字が薄れて見えにくくなったりします。

4. 白内障の治療

基本的には手術をしない限りは治りません。進行を遅らせる目薬(点眼薬)を外来で処方していますが、それでも視力低下が進んできた場合は手術を行います。

5. 手術の実際

昔は大変大掛かりな手術でしたが、現在は医学が進歩し白内障の手術は安全かつ確実な方法が開発され、当院でも行っています。

<入院について>

当院の場合は、入院の必要はありません。「日帰り手術」で行います。実際の手術時間は20分程度で、片眼ずつ行います。

<手術方法>

多くの方では「超音波水晶体乳化吸引術」と「眼内レンズ挿入術」を行います。白目(強膜)のところに、3ミリくらいの創口を作成し、そこから細いチューブのようなもので水晶体に超音波をかけて水晶体の中身(白内障の混濁しているところ)を溶かして吸引します。水晶体をとっただけでは、ピント合わせができないので、水晶体が入っている袋(嚢)に人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入します。

このレンズはアクリル樹脂でできており、一度挿入すると半永久的で、交換の必要などありません。通常はこの2つの手術(白内障をとる、眼内レンズを入れる)を同時に行います。

<麻酔>

局所麻酔で行います。(特別な場合を除き)目薬の麻酔でできますが、痛みが強い場合は注射の麻酔をすることもあります。

<術後の生活>

術後30分ほど安静にしていただき、お帰り頂きます。お手洗いも自分で行けますし、お食事も召し上がっていただけます。ただし当日は早めに休まれた方がよいと思います。翌日の診療で経過が順調な場合は眼帯がはずれます。通常、入浴、洗髪は翌日からご自身でできます。洗顔も目を閉じたままであれば翌日から可能です

6. 手術の注意

比較的安全だと言われている白内障手術ですが、問題点もあります。

<老眼は治せない>

白内障手術で濁った水晶体をとって眼内レンズにした場合も、ピント合わせがでけいない眼、つまり老眼は治せません。むしろ眼内レンズにすると基本的にピントが合うのは1つなので、いずれにしても眼鏡が必要になります。眼鏡は創が落ちついた術後2~3ヶ月後に外来で処方します。

<全身合併症によるもの>

体の病気が落ちついていないと、手術もよい結果が得られない場合があります。主治医の先生とよく相談してから手術を行います。特に糖尿病は眼の合併症も多く、コントロールが大切です。またリウマチがある方は、創の治りが悪いことがあります。

<眼の合併症によるもの>

緑内障や眼底出血などがある場合は、白内障の手術をしても視力の回復には限度がある場合があります。ご相談いただき、よくお話を聞いてください。

<後嚢破損>

可能性は極めて低いですが水晶体の袋(嚢)がもともと弱い場合には、眼内レンズ嚢内に挿入できない場合があります。その場合には後日、あらためて縫い付け専用の眼内レンズを取り寄せて縫い付けすることがあります。

<駆血性出血>

手術の合併症の中でも重症です。手術中の緊張や血圧が上昇するときに、ごくまれに大出血を起こしてしまう方もいます。すると手術前より視力が落ちてしまったり、不幸な結果になることもあります。ただし、これも可能性は非常に低いです。

<術後感染症>

手術の後、ばい菌が入らないように、抗生物質の内服、点眼をします。しかし、不必要に強く目をこすったり、点眼を忘れたりすると、ごくまれに感染症をおこします。手術の方法が改善され傷口は非常に小さくなり、感染症は極めて稀になりましたが、これは合併症の中でも重症になる可能性が高いので注意が必要です。術後も診察に必ず来ていただき、処方された薬をきちんと使用してくださるようお願いいたします。

<後発白内障>

水晶体の袋(嚢)が手術の後に濁ってくることがあります。これを後発白内障といいます。濁ってくると、視力が低下します。早い人は術後半年以内に起こる場合もあります。この濁りはレーザーで飛ばすことができるので、外来で処置できます。

7. 手術中の注意

<急に動かない>

非常に細かい手術で、顕微鏡で手術をしています。そのため急に動かれてしまうと、手術をしている方からは全く見えなくなり、刃物が近くにある場合などは非常に危険です。とくに咳やくしゃみが出そうなときは、声を出しておっしゃって下さい。
局所麻酔なので、手術中もお話はできます。

<痛かったら言う>

痛くても我慢すると、血圧が上がり、出血すると、非常に危険です。合併症も起こしやすくなりますので、必ずおっしゃってください。麻酔を追加できる場合もあります。また、お手洗いに行きたい、苦しいなど、なにか不都合があれば遠慮なくおっしゃってください。

8. 最後に

白内障手術は、患者様の視力を回復させ、よりよい生活を提供するためのものです。しかも非常に安定した手術です。しかし、人間の行う手術ですから100%ということはありません。飛行機に乗っても、道を歩いていても事故にあう危険性は0%ではないのと同じです。だからと言って、事故があると思って生きている人はいません。手術も同じです。私どもスタッフは患者様の安全を第一に考えています。万が一何か起こった場合も、全力で対応いたします。

その他、不明な点がございましたら医師に御相談ください。